2009年09月10日
『イワクラサミットin茅野(ちの)』、ご報告☆
9月5日、茅野市民館で行われた『イワクラサミットin茅野(ちの)』。
講師・パネラーのみなさんの熱心な発表・研究、素晴しかったです。
本当にたくさんの可能性に満ちた、創造的なサミットだったと思います。
~今、縄文王国に秘められた創造力の源泉が噴き出す~
というサブタイトルでしたが、まさに創造力の源泉が噴き出した
すごい機会でした。そんなわけで来れなかったみなさんのためにも、
できるかぎり詳細に報告記を書いていきましょう。
イワクララサミットin茅野(ちの)
「イワクラの宇宙から祭政体〈まつりごと〉の地平へ」
~今、縄文王国に秘められた創造力の源泉が噴き出す~
「イワクラの宇宙から祭政体〈まつりごと〉の地平へ」
~今、縄文王国に秘められた創造力の源泉が噴き出す~
チの聖地 茅・地・蛇・霊・道・血・乳・千・風・薙・知・治…
巨岩や祭祀石などのイワクラ(磐座)は、八ヶ岳山麓で育まれた縄文の圧倒的な造型美の謎を解く、新たな扉を開けるか。諏訪湖周辺に張り巡らされた謎の神体・ミシャグジや宇宙樹を想わせる御柱の古層をイワクラから読み解くことで、縄文王国に秘められた豊かな創造力が湧き出す。その時、茅野はチの聖地としてヨミガエル。
会場:茅野市民館 コンサートホール
(長野県茅野市仲町1ー22 電話0266-82-8222)
主催:イワクラ(磐座)学会
【入場料】
前売・会員 1、000円 当日 1、500円
問い合わせは、イワクラ(磐座)学会事務局 TEL06(6351)0075
【プログラム】
9月5日 開場 午後0時半~ 開演 午後1時~
■開会挨拶
来賓挨拶
■地元考古学者による研究レポート
小池 岳史 (茅野市尖石縄文考古館 学芸員)
■映像&LIVE 出演:美咲(シンガーソングライター)
■基調講演Ⅰ:藤森照信(建築家・東京大学生産技術研究所教授)
■シンポジウム
パネラー:
鎌田東二(京都大学こころの未来研究センター教授)
田中基(元季刊『どるめん』編集長/多摩大学講師)
平野貞夫(元参議院議員/土佐南学会代表)
コーディネーター
渡辺豊和(建築家/イワクラ学会会長)
荻原哲郎(編集者)
総合司会:
小林節子(元フジテレビアナウンサー)
美咲
■閉会挨拶
******************************
●開場 午後0:30~
続々と会場に人が集まってきます。
県内外からたくさんのみなさんが来てくださいました。
会場にこのサミットへの期待感が満ちてきます。
コンサートホール・受付前に特設された
諏訪・茅野・蓼科・八ヶ岳地域のイワクラ写真(by AKI)&地図の展示。
多くの皆さんが関心を寄せてくださってうれしかったです。
(イワクラ写真撮影・AKI、地図制作・美咲)
●イワクラサミットin茅野(ちの)スタート!
総合司会・小林節子さん イワクラ学会会長・渡辺豊和さんのご挨拶
茅野市教育長・牛山英彦さんのご挨拶 縄文のビーナス、仮面の女神、本物の土器たち
小林節子さんがご多忙のため会場に来れなかった茅野市長の
メッセージを読んでくださいました。そのメッセージを下に載せてみます。
『 2009年イワクラサミットが、豊かな自然に恵まれた風光明媚な高原都市・
茅野市において開催されますことを心からお喜び申しあげます。
国特別史跡の尖石遺跡、国宝土偶「縄文のビーナス」、重要文化財土偶「仮面の女神」
に代表される優れた縄文遺産を有する茅野市では、この度、この古来からの文化と
地の利点を活かすべく「縄文」によるまちづくり構想「縄文プロジェクト」を立ち上げました。
これと機を同じくして、古来より信仰の対象とされていた石、いわゆる「イワクラ」に光をあて、
その本質や重要性を広く伝えるとともに、地域が活性化するための「鍵」を見出そうとする場
であるサミットが、当市を会場に開催されますことは大変意義あることと思われます。
縄文王国であるこの地において、過去の創造力ある営みを見つめ直すことにより、
これからのひとづくりやまちづくりに繋げ、活かしていく契機になればと思います。
独創的な視点による発表や闊達な討議が交わされ、多くの方が「イワクラ」に関心を
寄せるまたとない機会となるよう、また当茅野市を知っていただくよい機会になりますよう
ご祈念申し上げメッセージといたします。
茅野市長 柳平千代一 』
縄文プロジェクトが進展していく鍵が、今回のイワクラサミットに
あったように思います。本当に今後の茅野市の縄文の展開が楽しみです。
●地元考古学者による研究レポート
尖石縄文考古館の学芸員・小池岳史さんが、茅野市芹ヶ沢・芹ヶ沢七石のひとつ『聖石』が縄文時代の聖石遺跡の環状住居跡の真ん中にあったという研究を発表してくださいました。実に60年ぶりに、光が当たった「聖石」・・・素晴らしい遺物がまたひとつ注目されたことを嬉しく感じました。当日、バネラーとして参加された講師のおひとり・田中基先生も「極めて重要な発表だった」と評価されていました。
縄文中期の集落遺跡とイワクラ(聖石)の関係をとおして当時の祭祀と住居の関係など、今後の研究の出発点になるかもしれません。今後の研究の展開も楽しみです。
●映像&LIVE
上の「美咲 in 諏訪大社 磯並六社祭」の動画が会場で放映された後、
大きなイワクラとの出逢いにより生まれた『石の記憶』という歌を
歌わせていただきました。
山の中にたたずむ石たちは、宇宙創世から今に
つながるまでの一部始終を記憶し、身守り続けてきたのかな・・・
そんなことを想い歌わせていただきました。
偶然、この9月5日は満月の日。
サビの歌詞が「満月の夜 さあ はじめましょう」
という歌は・・私的にはぴったりでした。
●基調講演Ⅰ:藤森照信(建築家・東京大学生産技術研究所教授)
藤森照信氏
昭和21年長野県茅野市生まれ。東北大学工学部卒業。東京大学大学院にて近代建築,都市計画史を専攻。現在,東京大学生産技術研究所教授。全国各地で近代建築の調査・研究にあたる一方,昭和61年赤瀬川原平氏らと「東京建築探偵団・路上観察学会」を結成,モノの観察を通して現代文化の断面を斬新に読み解く。また,建築家の作品として「神長官守矢史料館」「タンポポ・ハウス」「ニラ・ハウス」「一本松ハウス」「秋野不矩美術館」「熊本県立農業大学校学生寮」などがある。日本都市計画学会賞,東京市政調査会藤田賞,毎日出版文化賞,日本文化デザイン賞,サントリー学芸賞,日本芸術大賞,日本建築学会賞受賞
藤森先生の講演では興味深いことが沢山ありました。
特に「御柱」は神様の依代(よりしろ)ではなくスタンディングストーンと同じもので、
神様が降りる岩座(イワクラ)や依代としての樹木とは分けて考えるべきものというお話には
衝撃を覚えました。藤森先生は諏訪の祭祀、縄文祭祀のことになどに大変、
お詳しいのにも驚かされました。いやはや勉強しなくてはならないことか沢山あります。
●シンポジウム
<コーディネーター>
荻原哲郎(編集者)
渡辺豊和(建築家/イワクラ学会会長)
<パネラー>
平野貞夫氏
昭和10年、高知県生まれ。法政大学大学院社会科学研究科政治学専攻修士課程終了。衆議院事務局に就職し、園田直衆議院副議長秘書、前尾繁三郎衆議院議長秘書、委員部長などを経て平成4年に退官、同年の参議院議院選挙の高知地方区で当選して以後、議会運営と法律運用に精通する唯一の政治家として恐れられた。平成16年に政界から引退。著書には『ジョン万次郎に学ぶ―「自立と共生」の理念に生きた男―』(イプシロン出版企画)、『昭和天皇の「極秘指令」』『ロッキード事件「葬られた真実』『日本を呪縛した八人の政治家』(以上講談社)、『「小沢一郎との二十年』(プレジデント社)等。イワクラ(磐座)学会顧問、土佐南学会代表
田中基氏
昭和16年、山口県生まれ。早稲田大学文学部卒業。新聞社、出版社に勤務し、考古・民俗=民族関係の季刊誌『どるめん』の編集のかたわら,「古部族研究会」の同人と共に古諏訪祭政体の研究を、「縄文造形研究会」の同人と共に縄文中期の土器図像を神話文脈から解明する作業に取り組む。著書に『縄文のメドゥーサ・・・・土器図像と神話文脈』(現代書館)、共著に『日本原初考―古代諏訪とミシャクジ祭政体の研究』『日本原初考―古代諏訪の祭祀と氏族』『日本原初考―諏訪信仰の発生と展開』(永井出版企画)、『縄文図像学Ⅰ―表象の起源と神話像』(言叢社)等。茅野市在住
鎌田東二氏
昭和26年徳島県生まれ。國學院大學文学部哲学科卒業、同大学院神道学専攻博士課程修了。文学博士(筑波大学)。現在、京都大学こころの未来研究センター教授。宗教哲学・民俗学・日本思想史・比較文明論など多様な分野にわたって活躍。宗教・哲学・芸術を中心にこころと世界観・価値観・人生観・生き方について研究。東京自由大学運営委員長、猿田彦大神フォ-ラム世話人代表、石笛・法螺貝奏者。著書に『翁童論』四部作(新曜社)、『宗教と霊性』『聖地感覚』(角川学芸出版)、『神道とは何か』(PHP新書)、『神と仏の精神史――神神習合論序説』(春秋社)、『聖なる場所の記憶』(講談社学術文庫)など多数
鎌田東二先生のホラ貝フキ 鎌田東二先生の発表
日本列島は四つの大陸プレートが重なり合っている
世界でも唯一の国だそうです。またフォッサマグナと中央構造線が重なる
交点がこの茅野市にあるとのこと。
それらが縄文や諏訪の祭祀に大きな影響を与えてきたのでしょう。
豊富な縄文遺跡そして諏訪大社が両方備わっているチノの可能性
を存分にお話くださいました。
コーディネイター 荻原哲郎さんと渡辺豊和さん 小沢一郎さんの知恵袋 平野貞夫さん
平野さんは政権交代ホヤホヤのこの時・・・生々しい
政治の話と縄文革命の価値を熱心に伝えてくださいました。
また「原村の阿久遺跡は国会のはじまり」とのお話はとても興味深いものでした。
さらに縄文の母系社会と今回の小澤チルドレンと言われる若手の女性議員
を結びつけられ語られていたのは・・・すごく説得力がありました。
本当に今までとは違う、全く新しい流れがはじまったんですね。
諏訪・八ヶ岳の縄文祭祀に最も詳しい田中基さん
敷石住居の図像から読み解く縄文祭祀の意味や御柱の原点など・・・
興味深いお話が沢山ありました。
縄文での蛇(太陽)と蛙(月)の対比は中世以降の諏訪大社の祭祀にも
残されている・・・というお話は特に大切だと思います。
また鎌田先生もお話くださった八ヶ岳(蛇)と諏訪湖(蛙)という対比も実に面白い視点をいただきました。
敷石住居と胎児の形の相似性から読み解く
縄文祭祀の本質はやはり「ハラカラ文化」ですね。
大宇宙という母なるお腹からすべてが生まれ、
またそこに帰っていくという大きな宇宙観と死生観を縄文人たちは持っていたんですね。
その視点から土器の文様、敷石住居の石の配列と
図像、土偶の造形など・・・すべてがそこにつながっていることがわかってきます。
鎌田先生は石笛を吹いて音を鳴らしながら
縄文の遺物を今また柔軟な視点で捉えなおす
必要性をお話されました。
本当に本当に今、そのことが必要だと思いました。
●閉会式
最後は、来年が御柱ということで下諏訪町木遣保存会の小松さん小林さんによる
木遣りで締めさせていただきました。
「よいさー よいさー よいさー」
みんなの心が一つとなりました。
関東、関西、中京、北陸、中国、などからも沢山のお客様が来られていました。
なにか今後に役立つ意義あることをなにかひとつでも見つけて
帰られたのなら嬉しいです。
お客様のみなさん、イワクラ学会のみなさん、今回のサミットの関係者のみなさんの
おかげさまで本当に意義深いイワクラサミットになったと思います。
私も参加できて本当に本当に良かったです。
また今後もひきづづきイワクラツアーなど企画していこうと思っています。
今後ともよろしくお願いいたします☆
ありがとうございました∞
(Photo By AKI )
下にイワクラサミットの新聞記事を載せておきます。
2009年9月6日(長野日報)
2009年9月6日(信濃毎日新聞)
記事の詳細こちら→ http://www.shinshu-liveon.jp/www/topics/node_127843
Posted by 葦木啓夏(Hiroka Ashiki) at 22:26│Comments(2)
│JOMONルネッサンス
この記事へのコメント
僕も四つの大陸プレートと八ヶ岳と諏訪湖の陰陽の対比は
すごく参考になりました。
さらにヤト(蛇)が八ヶ岳の語源になっているとの鎌田先生の指摘も
実に新鮮で、縄文や諏訪の祭祀の秘密を解く鍵をいただいた
ような気がしてます。
あと、田中基さんの敷石住居の図像の説明もすごかった。
平野さんの縄文革命のお話もすごくリアリティがあったし・・・・
もう見どころ、聞きどころ満載・・・
本当に素晴らしい、今後の活動にも活かせることの多い、
大変、大変、有意義なサミットでした。
すごく参考になりました。
さらにヤト(蛇)が八ヶ岳の語源になっているとの鎌田先生の指摘も
実に新鮮で、縄文や諏訪の祭祀の秘密を解く鍵をいただいた
ような気がしてます。
あと、田中基さんの敷石住居の図像の説明もすごかった。
平野さんの縄文革命のお話もすごくリアリティがあったし・・・・
もう見どころ、聞きどころ満載・・・
本当に素晴らしい、今後の活動にも活かせることの多い、
大変、大変、有意義なサミットでした。
Posted by 篠原 at 2009年09月10日 23:03
「イワクラサミットIn茅野」実り多く素晴らしかったと思います。美咲さんはじめ地元のスタッフの方々の周到な準備のおかげだと思います。ごくろうさまでした。
藤森先生の基調講演も素晴らしかったのですが、シンポジュウムの内容が濃く、私にとって新しい発見がいっぱいありました。ホテルでの懇親会も楽しく、出席者の元気の良さにビックリです。あくる日の盤座ツアーも新たな発見がいっぱいでした。
7月末蓼科ビレッジで仕事がありその帰り、「神長官守矢資料館」を見学しました。そこに展示されていた「サナギ」という鉄鐸が気になり、帰って私なりに調べてみました。まず真弓常忠著「古代の鉄と神々」という本を読みました。製鉄技術は大陸から伝わったとばかり思っていましたが、この本には縄文時代から製鉄がおこなわれていた可能性があると書かれているのです。諏訪の守矢の神とタケミナカタの争いも、製鉄技術の新旧の争いだということです。新しい技術を持ってきたタケミナカタ(彼もさらに新しい技術に追われて出雲を出た)の下に守矢の神が入ったことになるようです。さらに興味深い本を見つけました。百瀬高子著「御柱祭 火と鉄と神と 縄文時代を科学する」この本は諏訪・茅野あたりを中心に書かれています。実験的に縄文時代の土器ででも製鉄が可能ということを証明しています。この製鉄技術ゆえこの地方の縄文文化は栄えたということです。黒曜石ばかりでなく諏訪・茅野には当時の先端技術があったことになります。さらに著者は御柱祭が縄文時代から伝わるものではないかと推理しています。
諏訪・茅野がますます面白くなってきます。
藤森先生の基調講演も素晴らしかったのですが、シンポジュウムの内容が濃く、私にとって新しい発見がいっぱいありました。ホテルでの懇親会も楽しく、出席者の元気の良さにビックリです。あくる日の盤座ツアーも新たな発見がいっぱいでした。
7月末蓼科ビレッジで仕事がありその帰り、「神長官守矢資料館」を見学しました。そこに展示されていた「サナギ」という鉄鐸が気になり、帰って私なりに調べてみました。まず真弓常忠著「古代の鉄と神々」という本を読みました。製鉄技術は大陸から伝わったとばかり思っていましたが、この本には縄文時代から製鉄がおこなわれていた可能性があると書かれているのです。諏訪の守矢の神とタケミナカタの争いも、製鉄技術の新旧の争いだということです。新しい技術を持ってきたタケミナカタ(彼もさらに新しい技術に追われて出雲を出た)の下に守矢の神が入ったことになるようです。さらに興味深い本を見つけました。百瀬高子著「御柱祭 火と鉄と神と 縄文時代を科学する」この本は諏訪・茅野あたりを中心に書かれています。実験的に縄文時代の土器ででも製鉄が可能ということを証明しています。この製鉄技術ゆえこの地方の縄文文化は栄えたということです。黒曜石ばかりでなく諏訪・茅野には当時の先端技術があったことになります。さらに著者は御柱祭が縄文時代から伝わるものではないかと推理しています。
諏訪・茅野がますます面白くなってきます。
Posted by 武部正俊 at 2009年09月14日 10:05